付録D 参考文献と次のステップ¶
D.1 この教材の次に読む本¶
統計学の入門・基礎(日本語)¶
- 東京大学教養学部統計学教室 編『統計学入門』(基礎統計学 I)東京大学出版会, 1991.
- 通称「赤本」。記述統計から推定・検定・回帰まで、日本の大学で長く使われてきた定番の教科書。本教材の第1〜19章の内容を、別の角度から復習できる。
- 東京大学教養学部統計学教室 編『人文・社会科学の統計学』(基礎統計学 II)東京大学出版会, 1994. /『自然科学の統計学』(基礎統計学 III)東京大学出版会, 1992.
- 分野ごとの応用例が豊富な続編。
数理統計学(本教材の第4部をさらに深く)¶
- 久保川達也『現代数理統計学の基礎』(共立講座 数学の魅力 11)共立出版, 2017.
- 確率論の基礎から推定・検定の理論、ベイズ法まで、数理統計学を体系的に学べる。本教材の次の一冊として最適。
- 竹村彰通『新装改訂版 現代数理統計学』学術図書出版社, 2020.
- 数理統計学の標準的な教科書。決定理論的な視点も含む。1991年に創文社から刊行された版を増補改訂したもの。
- G. Casella and R. L. Berger, Statistical Inference, 2nd ed., Duxbury, 2002.
- 英語圏の大学院の定番教科書。演習問題が豊富。
- L. Wasserman, All of Statistics: A Concise Course in Statistical Inference, Springer Texts in Statistics, Springer, 2004.
- 数理統計から機械学習に近い話題まで、コンパクトに一通り扱う。
ベイズ統計¶
- 須山敦志 著、杉山将 監修『ベイズ推論による機械学習入門』(機械学習スタートアップシリーズ)講談社, 2017.
- 共役事前分布を使ったベイズ推論を、機械学習の文脈でていねいに解説。
- A. Gelman, J. B. Carlin, H. S. Stern, D. B. Dunson, A. Vehtari and D. B. Rubin, Bayesian Data Analysis, 3rd ed., CRC Press, 2013.
- ベイズ統計の実践的なバイブル。
D.2 資格・検定¶
統計検定(日本統計学会公式認定):https://www.toukei-kentei.jp/
統計検定との対応¶
統計検定の各級の出題範囲表と、この教材の各章の対応です。
- ◎:章の中心的な内容が、その級の出題範囲表に含まれる
- ○:一部の節だけが含まれる(どの節かは下の「級ごとの読み方」)
- 空欄:その級の出題範囲表には挙がっていない
上の級は下の級の内容を前提にしています(準1級は2級の範囲を含みます)。 空欄でも、上の級を受けるなら読んでおく必要があります。 また、◎ はその章で試験対策が十分という意味ではありません。
| 章 | 3級 | 2級 | 準1級 | 1級(統計数理) |
|---|---|---|---|---|
| 第1章 データの種類と可視化 | ◎ | ◎ | ||
| 第2章 代表値と散らばり | ◎ | ◎ | ||
| 第3章 2つの変数の関係 | ◎ | ◎ | ||
| 第4章 確率の基本 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
| 第5章 確率変数と確率分布 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
| 第6章 期待値と分散 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
| 第7章 代表的な離散分布 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
| 第8章 代表的な連続分布 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
| 第9章 多次元の確率分布 | ◎ | ◎ | ◎ | |
| 第10章 確率変数の変換 | ○ | ◎ | ◎ | |
| 第11章 大数の法則 | ◎ | ◎ | ◎ | |
| 第12章 中心極限定理 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
| 第13章 母集団と標本分布 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
| 第14章 点推定 | ○ | ◎ | ◎ | |
| 第15章 区間推定 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
| 第16章 仮説検定の考え方 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
| 第17章 いろいろな検定 | ◎ | ◎ | ◎ | |
| 第18章 回帰分析 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
| 第19章 分散分析 | ◎ | ◎ | ◎ | |
| 第20章 ベイズ統計入門 | ◎ | ◎ |
級ごとの読み方¶
- 3級:第1〜3章に加えて、次の節を読みます。 4.4〜4.5(条件付き確率と独立)、5.1〜5.4(確率変数)、6.1〜6.3(期待値と分散)、7.2(二項分布)、8.2(正規分布)、12.4(二項分布の正規近似)、13.2(標本平均の分布)、15.1・15.5(母平均・母比率の区間推定)、16.1〜16.3(検定の考え方と p 値)、18.1〜18.2(回帰直線)
- 2級:第1〜19章が中心です。ただし次の節は準1級・1級向けなので、最初は読み飛ばしてかまいません。 6.5(積率母関数)、8.4〜8.6(ガンマ分布・ベータ分布など)、9.5(条件付き期待値)、10.1〜10.2・10.4(10.3 の再生性は2級でも使います)、11.7(収束のいろいろ)、12.3(中心極限定理の証明)、12.7(デルタ法)、14.3〜14.7(モーメント法・最尤法・フィッシャー情報量など)、15.8、16.8〜16.9(ネイマン・ピアソンの補題・尤度比検定)、17.6(ノンパラメトリック検定)、19.5〜19.6(多重比較・二元配置)
- 準1級:2級の範囲を含むので、全20章を読みます。2級で読み飛ばした節と第20章が、2級との差になる部分です。
- 1級(統計数理):第4〜20章と付録Aが中心です。1級は論述式なので、折りたたまれた証明まで読み、自分で導出を書けるようにしてください。
この教材では扱っていない・手薄な範囲¶
受ける級に合わせて、公式テキストや過去問で補ってください。
- 3級:時系列データ(時系列グラフ・指数・移動平均)、標本調査と実験の考え方
- 2級:3級の項目をより詳しくしたもの(成長率・幾何平均・コレログラムなどの時系列データの処理、層化抽出・クラスター抽出などの標本抽出法、フィッシャーの3原則・ブロック化などの実験計画)に加えて、ローレンツ曲線・ジニ係数、偏相関係数、相関係数の区間推定
- 準1級:確率母関数・包除原理、ワルド検定・スコア検定、カルバック・ライブラー情報量、ジャックナイフ法・ブートストラップ法、回帰診断の詳細(てこ比・Cook の距離など)と一般化線形モデル(ロジスティック回帰など)、実験計画法、標本調査法、多変量解析、時系列解析、マルコフ連鎖と確率過程、分割表のモデル、欠測データ、モデル選択(AIC など)。符号付き順位検定やクラスカル・ウォリス検定などは名前の紹介にとどまります
- 1級(統計数理):確率母関数、ワルド型・スコア型検定、カルバック・ライブラー情報量と AIC、共分散分析、欠測・打ち切りデータ、ブートストラップなど。過去問で論述の練習をすることも欠かせません。分野別の 統計応用 は扱っていません
準1級の出題範囲の改定(2027年1月1日から)
準1級の出題範囲表は2027年1月1日から改定され、概収束・分布収束、スルツキーの補題、バイアス・バリアンス分解、統計的因果推論などが加わります。 このうち収束の種類は第11章(11.7)、バイアス・バリアンス分解は第14章(定理14.1 MSE の分解)で扱っています。スルツキーの補題と統計的因果推論は扱っていません。 章ごとの対応表は、改定の前後で変わりません。
出典:統計検定の公式サイト(3級・2級・準1級・1級)で公開されている出題範囲表(2026年10月時点)。 範囲は改定されることがあるので、受験前に最新の範囲表を確認してください。
D.3 次に学ぶとよいテーマ¶
本教材で学んだ内容は、次のような発展的なテーマの土台になります。
graph TD
A[本教材<br>確率・推定・検定・回帰・ベイズ] --> B[一般化線形モデル<br>ロジスティック回帰・ポアソン回帰]
A --> C[多変量解析<br>主成分分析・因子分析・クラスタリング]
A --> D[時系列解析<br>自己回帰モデル・状態空間モデル]
A --> E[因果推論<br>ランダム化実験・傾向スコア・DAG]
A --> F[ベイズモデリング<br>階層モデル・MCMC]
A --> G[機械学習<br>正則化・交差検証・モデル選択]
B --> F
C --> G
- 一般化線形モデル:第18章の回帰分析を、2値データやカウントデータに拡張する。
- 多変量解析:多数の変数の関係を要約する(主成分分析など)。第9章の多変量正規分布と行列の知識が役立つ。
- 時系列解析:時間とともに変化するデータの分析。独立性の仮定を外した世界。
- 因果推論:「相関と因果」(第3章)の問題に正面から取り組む。
- ベイズモデリング:第20章の考え方で、複雑な階層構造をもつモデルを作る。
- 機械学習:予測を重視した統計的手法。過学習、正則化、交差検証などの考え方は、本教材の「偏りと分散のトレードオフ」(第14章)とつながっている。
D.4 計算に使えるツール¶
この教材の図はすべて Python(NumPy・SciPy・Matplotlib)で作成しています。ソースコードは GitHub リポジトリ の scripts/ にあります。
- Python:
scipy.statsに主要な確率分布と検定がそろっている。statsmodelsで回帰分析、PyMCでベイズ推論。 - R:統計解析のための言語。
t.test()、chisq.test()、lm()など、本教材の手法がすべて標準で使える。 - 表計算ソフト:Excel や Google スプレッドシートにも
NORM.DIST、T.TESTなどの統計関数がある。
たとえば Python では、第17章の例題が次のように数行で計算できます。
from scipy import stats
# 1標本 t 検定(第17章)
x = [102.3, 99.8, 101.5, 100.9, 98.7, 103.1, 100.2, 101.8, 99.5, 102.2]
print(stats.ttest_1samp(x, popmean=100)) # t = 2.232, p = 0.0525
# カイ二乗独立性検定(第17章)
table = [[30, 40], [35, 35], [40, 20]]
chi2, p, dof, expected = stats.chi2_contingency(table, correction=False)
print(chi2, p, dof) # 7.61, 0.022, 2
# 標準正規分布の上側 2.5% 点
print(stats.norm.ppf(0.975)) # 1.959963...